1)日本国内の公害病と世界の環境問題について
日本の環境問題は、第二次世界大戦敗戦後からアメリカやイギリスなどの戦勝先進国と肩を並べるべく大規模工業地帯の建設が急がれ、富山県出身の浅野総一郎氏率いる浅野財閥が安田財閥とともに整備した京浜工業地帯が国内最初の臨海工業地帯となりました。
臨海工業地帯は、茨城県鹿嶋市周辺の西の鹿島臨海工業地帯から東の大分臨海工業地帯を太平洋ベルトを中心に整備され、太平洋ベルト内の三重県四日市市で発生した公害病「四日市ぜんそく」が大きな問題となりました。
公害病は、四日市ぜんそくが日本初のものではなく、1878年には渡良瀬川の鮎の大量死を発生させた足尾鉱毒事件が日本初と考えられています。
しかし、明治時代末期〜大正時代初期の1910年代に富山県神通川流域で発生した「イタイイタイ病」日本初の公害病に認定され、四日市ぜんそくに「水俣病」と第二水俣病と呼ばれる「新潟水俣病」を合わせて日本4大公害病と呼ばれています。
水俣病は、昭和31年頃から熊本県水俣湾不知火海沿岸でチッソ水俣工場が排出された有機水銀を病原とする公害病であり、昭和39年には富山県阿賀野川流域で昭和電工鹿瀬工場から排出されるメチル水銀が原因で新潟水俣病が発生しました。
現在では、熊本水俣病も新潟水俣病も安全宣言が行われていますが、新潟県関川水系や無機水銀が原因の山口県周南市などで第3水俣病騒動が発生したことがあります。
2)水銀には3つの法律が施行されている
水銀は、日本国内では1964年の年間需要量約2,500トンをピークに2006年には100分の1以下まだ減少し、現在では「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」と「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」、「外国為替及び外国貿易法」の3つの法律が施行されています。
そのため、水銀を使用した体温計や血圧計などの製品の製造販売は2020年いっぱいで製造販売が終了となりますが、照明用蛍光ランプは1本あたり5mg以下の水銀量の製品に限り販売が継続されているのが日本の現状です。
世界では、平成29年5月18日付けで「水銀に関する水俣条約」が世界50か国で締結され、水銀による環境汚染は減少すると考えられています。
地球規模では、オゾン層の破壊や地球温暖化に起因する北極圏の海氷面積の減少や砂漠化などの環境問題に加え、深海10,000m以上にも及ぶプラスチック汚染が大きな問題となっています。
プラスチック汚染は、北西太平洋のマリアナ諸島の東に位置するマリアナ海溝の水深11,000mに潜水したヴィクター・ヴェスコヴォ氏によって撮影され、映像にはビニール袋やスナックの包装紙などが映し出されていることからマイクロプラスチックが深海魚の体内に蓄積されているにではと懸念されているのが現状です。
プラスチック汚染は、日本のマスメディアの知識不足や説明不足により海洋に捨てられるストローやビニール袋など大きなプラスチックゴミが問題と考えていますが、自然環境中に存在する非常に小さなマイクロプラスチックも非常に大きな環境問題です。
3)マイクロプラスチックは健康に悪影響を及ぼす
マイクロプラスチックは、一辺が1mm以下の非常に小さなプラスチックであり、深海魚だけでなく一般的な海洋生物が摂取することで食物連鎖による生物濃縮が引き起こされ、最終的に食物連鎖の頂上に君臨する人間の健康にも悪影響を及ぼすと懸念されています。
マイクロプラスチックは、太平洋に浮遊する約79,000万トンのゴミの約31%の相当する24,500万とされ、マイクロビーズとも呼ばれる1次と2次があります。
マイクロビーズは、身近なところでは角質を除去するタイプの洗顔料や化粧品に多く配合されており、工業用では製品の研磨剤や加工しやすいように3mm〜5mm前後の粒子状に加工されたペレットなどです。
2次は、ストローやビニール袋などのプラスチックゴミが海洋に廃棄されたことで波の応力や太陽の有害光線により徐々に小さく壊れていった結果の産物とされ、魚類の消化器官などの付着するマイクロプラスチックです。
マイクロプラスチックは、海洋を漂い生物濃縮を引き起こすだけでなく漂う最中に残留性有機汚染物質を吸着するリスクが非常に高く、生体濃縮された残留性有機汚染物質は生体ホルモンの機能バランスを乱す内分泌撹乱を引き起こす危険性がある物質です。
マイクロプラスチックは、2050年には1950年代の200倍をはるかに超える量が海洋に漂うと考えられ、海洋に生息する魚類よりも多くなるとも予測されているのが実情です。
しかし、日本政府はアメリカとともに2018年6月に開催されたカナダG7シャルルボア・サミットの「G7海洋プラスチック憲章」に署名しなかった醜態をさらしましたが、大阪で開催されたG20サミットの議長国として新たな海洋プラスチック汚染を2050年までにゼロにする「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」と発展途上国への支援強化する「マリーン・イニシアティブ」を締結しています。
神奈川県では、打ち上げられたシロナガスクジラの胃袋からプラスチックゴミが発見されたことから、県独自に「かながわプラごみゼロ宣言」を提唱しています。
参考記事:新東京グループ株価
最終更新日 2025年5月20日






